修行時代に手渡された1枚の煎餅…それが「ぬれせんべい」との出会いでした。
すぐにその「ぬれせんべい」のルーツを探るために、千葉県の銚子に向かいました。そうです。銚子が「ぬれせんべい」の発祥の地だからです。
店先で焼いた煎餅に醤油だれをしみ込ませ売っていました。いろいろな「ぬれせんべい」を買い求め、会社に戻り開発スタッフで試食してみると、「しょっぱくて、しけたお煎餅」といったイメージでした。「こんな商品が売れるのだろうか」と疑問に感じました。
しかし社長の命令は絶対です。なんとか似たような商品を作り上げ、社長に提案しました。社長はそれを食べ「よし、これでいこう」と。そして「ぬれせんべい」は初めて一般流通のスーパーに流れ出していったのです。私の中ではこの商品は売れない、すぐに終売になるだろうと思っていました。しかし私の予想は当たらず、売れてしまいました。珍しさとマスコミがとりあげた事もあり、製造が間に合わない程売れ、一気にヒット商品に昇りつめる勢いでした。
売れるとなるとすぐに真似るのがこの業界。しばらくすると流通に数社の「ぬれせんべい」が売られるようになり、そして大きな問題が発生したのです。
でん粉の老化です。
通常お煎餅は、水分をある程度乾燥することにより長期間保存し、食べることの出来るお菓子です。そこに水分が入り込むと、しけたまずいお煎餅になってしまいます。
もともと水分比率の高い「ぬれせんべい」は、通常お煎餅がしけるものよりも大きな米でん粉の変化が起きてしまったのです。
製造が追いつかない程売れていた時は、大きく変化する前に食べてしまっていたので良かったのですが、流通にたくさんの「ぬれせんべい」が売られるようになると商品の回転率は落ち、米でん粉が変化した商品はクレームとして大量に返品となり、倉庫に戻ってきました。
そして「ぬれせんべい」は販売して1年足らずして流通から消えてしまいました。
「ぬれせんべい」の流通販売後、私は『美味しい「ぬれせんべい」をつくりたい』と試行錯誤を続けました。
満足のいく商品を作り上げるまでに、実に8年の歳月を要しました。
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[…] 〜ぬれせんべいとの出会い〜へ続く… […]